初めての方へ
最終更新2026.3.3
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はじめまして。
このサイトをご訪問いただきありがとうございます。
capeeshの作家、岡田陽子と申します。
私は、動物をモチーフにした一点物の立体を制作しています。
一般には「ぬいぐるみ」と呼ばれているものです。
このページでは、
なぜそのかたちで制作しているのか、
どのような考えから生まれているのかを、
はじめての方に向けて少しだけお話しします。
気になる箇所だけでも、
ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
おそらくここに辿り着いたあなたも、
少なからず動物が好きな方なのではないでしょうか。
◼️動物という存在
私は昔から、動物が好きです。
理由をうまく説明することは難しいのですが、
動物がそこにいると、
周囲の世界の密度が変わるように感じます。
空気の流れや時間の進み方が、
ほんの少しだけ違って見える。
そして、自分が宇宙の中のちっぽけな一人の人間であることを、
思い出させてくれる存在でもある気がしています。
絵を描くときは、
背景を描いて世界をつくりますが、
私が表現したいのは、
動物を中心にして変わる世界そのものです。
だから私は、その中心にあるものだけを取り出して
かたちにしたいと思いました。
それが、立体という方法を選んだ理由です。
私の造形がそこにあることで、
その周囲に少しだけ空気や気配が生まれる。
そんな存在をつくれたらいいなと、
いつも思っています。
◼️なぜ、ぬいぐるみなのか
私の作品は、裁縫によって作られています。
私はもともと縫うことが得意で、
この方法が一番自然に感じられるからです。
そして、この世界では布で縫われた動物の立体を
「ぬいぐるみ」と呼んでいるので、
作品をぬいぐるみとしてカテゴライズしています。
彫刻という言葉を使うと、
少し大げさな感じがします。
でも、私たちは子どもの頃から、
ぬいぐるみのような立体に触れ、そばに置いてきました。
私はその延長線上に、
大人が向き合う立体があっても
自然なことだと思っています。
ぬいぐるみと立体造形、あるいはアートは、
なぜか別の分野として語られることが多いけれど、
好きなものをそばに置く、
ただそれだけのことを、
大人もしていいのではないかと感じています。
私にとってぬいぐるみは、
役割や用途のあるモノというより、
そこに在ることで空気を少し変える存在。
capeeshで制作しているぬいぐるみは、
一般的なものとは少し違うかもしれません。
強く抱いたり、遊んだり、
一緒に眠ったりすることを前提にはしていません。
けれどそれは、機能を失ったというより、
別の在り方を選び取った結果だと思っています。
“機能”よりも“在り方”を優先する。
一定の距離があっても、
そこにあることで満たされる。
そんな存在を、ぬいぐるみという方法で作りたい。
私の制作の出発点になっています。
◼️何を大切にしているのか
制作を続ける中で、自然と残ってきた考え方があります。
特別なルールというより、
気づけば手放せなくなっていた姿勢のようなものです。
・裁縫であること
肉球や毛並みの模様など、表現したいことに対して、
それをどのように再現するかという技術の壁があります。
今はさまざまな技法を選択肢として試せる時代ですが、
私たちは「裁縫」の技術から逸脱しないことを大切にしています。
学生が制服という決まりの中でどこまで自分らしさを表現できるかを工夫するように、
限られた方法の中で試行錯誤を重ねることで、
洗練されていくものがあると感じています。
・デザイン理念
私たちの制作は、「本物らしさ」や「可愛らしさ」を
目標に据えるところから始まるわけではありません。
それらはあくまでも結果であり、今どこにいるのか、どこを目指しているのか
作りながら考え、考えながら作る――その往復の中で、少しずつ確かめていく。
capeeshの制作は、そのプロセスそのものを大切にしています。
現在の指針は、デザイン理念ページに詳細を記載しています。
・一点物であること
capeeshの作品は、すべて一点物です。
似た作品はあっても、全く同じ存在が再び作られることはありません。
さらに言えば、信条以前に、
同じ作品をもう一度つくることは、実際にはほとんどできません。
それはあまりに素材が柔らかく、制御が難しく、
かつ縫い方が少し違うとファーの向きや癖が変わるからです。
そこが量産品でないことの弱点でもあり強みでもあると思っています。
・とどまらないこと
理想の作品を目指して、
材料だけでなく、内部構造や型紙まで、作品ごとに変化していっています。
「この製法なら完璧」という時が来ることはないのかもしれませんが、
挑戦し続け、変わり続ける。
それが制作の原動力になっています。
◼️手元に置くことを考えるとき
立体は、見るだけではどうしても伝わらない部分があります。
私たちが大切にしているのは、
柔らかくくったりとした触感、
手にしたときに感じるずっしりとした重み、
そして、同じ空間にあることで生まれる静かな存在感です。
それらは、写真や言葉では輪郭がぼやけてしまう感覚かもしれません。
もしこの存在を生活の中に置いてみることを
ふと想像されるようでしたら、
そうした身体的な感覚も含めて、
ゆっくり思い描いていただけたらと思います。
capeeshは、「分かる人だけの作品」ではありません。
特別な置き場所を用意しなくても構いません。
部屋の片隅で、生活に溶け込むことで、あなたの時間の一部になります。
その在り方については、ページの最後でColumnとしてご提案させていただいています。
⚫︎いくつかの関係の結び方があります
capeeshの作品には、いくつかの購入の仕方があります。
あなたが心地よいと感じる距離で、関係が始まります。
・通常販売作品
すでに生まれている存在と出会う形です。
月に3〜6体の作品を発表しています。
・セミオーダー作品
過去作の設計をもとに、
雰囲気や色味などを相談しながら制作する形です。
・特定の個体をモデルにしたフルオーダー作品
実在する動物をもとに、
エピソードや印象をお伺いしながら制作します。
・制作履歴のない動物をモデルにしたフルオーダー作品
これまで制作したことのないモチーフを、
対話を通してゼロから設計していきます。
どの方法も、「選ぶ」というより、
関係が始まるきっかけの違いだと私たちは考えています。
オーダーの詳しい流れについては、ORDERページにまとめています。
⚫︎この価格の理由
capeeshのぬいぐるみは、
すべて一点物のアートクラフト作品です。
それぞれの動物に合わせて個別に設計し、一体ずつ制作しています。
制作工程は、この数年で段階的に増えてきました。
ただしその多くは、完成した姿からはほとんど読み取れないものです。
金属製の骨格を布で包んで縫うこと。
色ごとに染色したファーを、細かく縫い合わせること。
それらは、見た目を分かりやすく変えるための工程ではありません。
私たちが重視しているのは、
触れたとき、抱いたとき、そして長く眺めたときに、
違和感が生じない状態を保つことです。
より理想のぬいぐるみに近づくため、
効果は目立たないかもしれない工程であっても、
必要だと判断したものは、ひとつずつ加えてきました。
その結果、制作に要する時間と工程は増えています。
もし、見た目の変化を重視される場合、分かりづらく感じられるかもしれません。
それでも私たちは、この作り方が、この作品の在り方にとって必要だと考え、
離れずに続けています。
capeeshの価格は、
完成した姿だけでは測れない、
制作の積み重ねを含んだものとして設定しています。
もし作品との距離を測りたいと感じられましたら、
ご購入前提でなくても構いません。
どうぞご相談ください。
◼️おわりに
ここまでお読みいただき、
ありがとうございました。
もし少しでも気になる部分があれば、
お時間のあるときに、
他のページもゆっくりご覧いただけたら嬉しいです。
文章よりも、実際の佇まいを見ていただくことで、
感じていただけることがあるかもしれません。
capeeshは、
作品を手にしていただくことだけを目的にした場所ではありません。
ふと思い出したときに訪れて、ただ眺める。
それだけでも、
この場所の役割は十分に果たされていると思っています。
・HOME
これまでの作品や現在ご覧いただける作品、販売予定の作品をご覧いただけます。
・ABOUT
capeeshのコンセプトと作品の特徴をまとめています。
・制作工程
作品がどのように生まれるのか、工程を詳しくご紹介しています。
・GALLERY
ご縁のあった作品を、最近のものから遡って掲載しています。
・デザイン理念
制作の軸となる考え方をまとめたページです。
・ORDER
オーダー制作をご検討の方向けのご案内です。
・ATELIER
並んだ作品の様子や、暮らしの中での佇まいの一例をご覧いただけます。
capeeshは、
強く主張する存在ではありません。
生活の中で、気づけばそこにいる。
そんな距離で、長く関係が続いていくものだと思っています。
どこかのタイミングで、
「この一体を手元に置いてみたい」と感じることがあれば、
そのときが、あなたとその作品の
ちょうどいい出会いの時期なのだと思います。
このページが、そのきっかけのひとつになっていたら
嬉しいです。
capeesh岡田陽子
🐈⬛ Column 🐈⬛: capeeshのある暮らし|一点物という贅沢
ここでは、capeeshの作品が日々の暮らしの中でどのように作用するのかを、
感覚的な側面に加えて、心理学や認知科学の視点からも少しだけお話ししてみます。
⚫︎代替できない一点を、人生に置くという選択
――「交換不可能な存在」が自己を安定させる
あなたのそばにあるものは、
どれほど「取り替えのきくもの」でしょうか。
もし失くしても、また買える。
壊れても、同じ型番を探せる。
現代の生活は、ほとんどが交換可能なモノでできているようです。
心理学や消費行動研究では、
こうした環境では人はモノを「役に立つかどうか」という機能的価値で扱いやすく、
それ以上の意味づけを行いにくくなると言われています。
一方で、代替できない対象(irreplaceable object)は、
「自分はどんな人生を生きているのか」という感覚と
深く結びつきやすいようです。
なぜなら、
その対象と過ごした時間そのものが、
記憶やアイデンティティの一部になっていくからです。
capeeshの作品は、すべて一点物で、同じものは二度と作られません。
実用品でも、必需品でもありません。
それでも一体を迎え入れるという行為は、
「自分の人生の中に、交換不可能な存在を意図的に置く」
という選択でもあるのかもしれません。
私たちはそれぞれ唯一無二の存在で、
誰かの代わりではありません。
であれば、そばに置く存在もまた、
唯一無二であってもいいのではないでしょうか。
それは消費というよりも、
自分の時間や価値観によって、
人生の意味づけを少しだけ変える行為のように感じています。
⚫︎対話者として迎える
――外化・愛着・セルフケア・儀式化という心理のはたらき
「いってきます」
「ただいま」
「今日は少し疲れた」
モノや写真、ぬいぐるみに
ふと声をかけたことがある方も多いのではないでしょうか。
こうした行為には、いくつかの心理的なはたらきがあると言われています。
① 外化(Externalization)
認知行動療法やナラティヴセラピーでは、
自分の内面を外の対象として扱うことが、
感情整理に役立つことがあるようです。
頭の中だけで考えるよりも、
言葉として外に出すことで、
自分の状態を少し距離を置いて眺められるようになる。
たとえ相手が無生物であっても、
語りかけることで内面が整理されるという点では、
日記や独り言と似た構造を持つと言われています。
capeeshは反応を返さないからこそ、
評価されず、結論を急がされない
静かな外化の場として機能することがあるのかもしれません。
② 愛着対象としての機能
心理学では、人は安心感を得るために
「安定した対象」を必要とすると考えられています。
ぬいぐるみや写真、小さな置物に
声をかける行為は、
他者との関係性を内面で再現する
セルフケアの一種とも解釈されることがあるようです。
孤独感の緩和や、気持ちの落ち着きに
つながる場合もあると言われています。
③ セルフ・コンパッションの媒介
「自分に優しくする」ということは、
直接やろうとすると難しいものです。
けれど、
何かに話しかけたり、
何かを気遣ったりすることで、
間接的に自分の心をいたわるルートが生まれることがあるようです。
マインドフルネスやセルフ・コンパッション研究でも、
こうした働きが指摘されています。
④ 儀式化(リチュアル)
「いってきます」や「ただいま」は、
行動の区切りとしての儀式の役割も持っているようです。
外出から帰宅へ
緊張から休息へ
仕事モードから私的な時間へ
言葉と対象を組み合わせることで、
気持ちの切り替えが滑らかになることがあると言われています。
capeeshは、生活の中に置かれた
小さな支点として働くことがあるのかもしれません。
⚫︎「見る」だけで起こる変化
――動物イメージと安心感
実物でなくても、
動物の写真や絵を見て
ふっと心が緩んだ経験はないでしょうか。
神経科学の分野では、
動物の顔や視線を意識して見ることで、
安心感に関わる反応が起こることがあるとも報告されているようです。
触れなくても、
視覚的に存在を認識するだけで
心理的な変化が生じる場合があると言われています。
capeeshの作品は、
目線や姿勢、重さ、佇まいといった
存在を感じさせる手がかりを持っています。
そのため、
単なる装飾物というよりも
視線が自然に留まりやすく、
呼吸や思考のリズムが
少し落ち着くことがあるのかもしれません。
部屋の中に
「何もいない」のではなく、
「意識を向けられる存在がある」
その状態が、
日常の心理的な安定を
静かに支えることもあるようです。
⚫︎生き物の代わりではなく、「構造」を迎え入れる
動物と暮らすことが、
心身に良い影響を与える可能性については、
多くの研究で示唆されています。
そこには、
・生きた存在がいるという注意の向け先
・世話や役割を通じた意味づけ
・感情を向ける対象があること
といった心理的な構造が関係しているようです。
capeeshは、生きている動物の代わりではありません。
世話も不要で、反応も返しません。
けれど
・視界に安定した対象があること
・大切にしている存在が生活空間にあること
・そこに意識を向け、関係を結ぶこと
こうした構造の一部を、
責任や負担を伴わずに迎え入れることは可能です。
それは代替ではなく、
生き物と暮らすことの心理的な側面の一部を
別のかたちで生活に組み込む選択とも言えそうです。
⚫︎所有ではなく「関係」として持つ一点物
私たちは、大量生産・大量消費の流れの中で暮らしています。
モノは次々と更新され、
気づけば人生そのものが消費の連続のように感じられることもあります。
心理学的には、
交換可能なモノは使用価値を軸に記憶されやすく、
代替できない対象は、
「どの時間をともに過ごしたか」として
記憶に残りやすいと言われています。
それは、消費の履歴ではなく
関係の履歴です。
capeeshの作品は、実用品ではなく、
代替もできません。
だからこそ、その一体と過ごした時間は、
「持っていた」ではなく
「ともに在った」時間として残るのではないかと感じています。
私たちは、capeeshを
所有するモノというより、
人生の中に迎え入れる
小さな関係としてお届けしたいと思っています。